自筆証書遺言の方式緩和

第三番目は、『遺言制度に関する見直し』として、次の3項を法律化しました。

 

1.自筆証書遺言の方式緩和民法968条関係
2019年1月13日施行

 

(1)見直しのポイント
自筆証書遺言作成に際してパソコンなどで作った財産目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付したりすることが出来るようになりました

 

(2)制度導入のメリット
改正以前は、自筆証書遺言の場合は、全文を自筆する必要がありました。財産目録についても、パソコンでの作成、通帳等のコピーを添付することは認められず、全文を自書しなければなりませんでした
この全文自書は、遺言作成者にとっては、かなりの負担であり、自筆証書遺言の作成をためらう人が多くいました

 

 

   

 

制度導入によって
遺言者は、自筆によらない財産目録(財産目録をパソコンで作成、通帳のコピーを添付等)を添付できるようになりました。また、財産目録等の添付書類には、遺言者が署名押印しなければならないので、偽造の防止にもなります

 

   

 

 

 

この『自筆証書遺言の方式緩和』によって、少しだけ遺言者の負担が軽くなりましたが、やはり自筆証書遺言を作成するのはかなり負担がある気がします。しかし、残される家族の為にも、『遺言書』は考えてみてください!


遺言執行者の権限の明確化

2.遺言執行者の権限の明確化民法1007条1012条〜1016条関係)
  2019年7月1日施行

 

(1)見直しのポイント
法改正における遺言執行者の立場に関しては、任務の開始時期・地位・権限の3つのポイントがあります。

 

@改正民法1007条2項で、「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない」としました。
これにより、遺言執行者の任務開始を規定して、遺言の執行を中立・公正に行うことを明確化したのです。

 

A遺言執行者の地位について、
改正前は、遺言執行者は相続人の代理人という立場でした、しかし、本来、遺言執行人は、遺言者のために遺言内容を実現するという被相続人の立場であるべきものです。
今回、改正民法1015条で、「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接その効力を生じる」として、遺言執行者は相続人のためではなく、遺言者の意思・遺言内容を実現するたに遺言を執行することを明確化しました。

 

B遺言執行者の権限については
改正前でも、遺言執行者に強い権限を持って遺言内容を実現することを認めていましたが(旧民法1012条)、その権限の範囲があいまいでした。今回の改正で、民法1012条1項『遺言執行者は、遺言の内容を実現する
ために』の文言を加えて、遺言執行者が遺言の内容を実現するための権限を持っていることを明確化しました。

 

 

 

この改正によって、『遺言執行人』の立場・権限の中立が明確化されました!中立を考えると、被相続人の方が生前に遺言執行人を指定する場合はもちろんですが、遺言執行者は利害関係のない専門家に依頼した方が良いと思います!


公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度

3.法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
2020年7月10日施行

 

(1)法律創設のポイント
『遺言書』は、被相続人の最終の意思を実現するものです、加えて『遺言書』によって相続をめぐる紛争を回避することが出来るというメリットもあります。この様に『遺言書』が果たす役割はますます重要になってきています
しかしながら、わが国における遺言の作成率は諸外国に比べて低いと言われています、今回のこの自筆証書遺言の保管制度、前述した自筆証書遺言の方式緩和の創設によって遺言書を作成し易い環境を整備しました

 

具体的には、この「自筆証書遺言の保管制度創設」によって、現状、自筆証書遺言書は通常自宅で保管されることによって発生する問題点
@遺言書の紛失・盗難
A相続人による遺言書の廃棄・隠匿・改ざんのおそれ
B上記による相続の紛争が生じるおそれ。が解決されることになります加えて【検認】が不要です)

 

『法務局における自筆証書遺言の遺言書保管制度』の流れを簡単に図で表すと、下記のようになります。

 

  

 

この法律創設によって、『遺言書の紛失や隠匿等の防止』・『遺言書の存在の把握が容易』になって、『遺言者の最終意思の実現』・『相続の円滑化』が期待できます
尚、詳細は法務省の『預けて安心!自筆証書遺言書保管制度』ご覧ください。

 

 

 

この法律の創設によって、自筆証書遺言書は安全に保管できるようになりましたね!
しかし、保管が安全になっただけであり、遺言書の『有効』が確約できるものではありません。
やはり、確実に有効な『遺言書』を残すためには『専門家に相談』したほうが良いです!